メニュー 低血糖発現 << 

第43回 人工甘味料と糖尿病リスク

 >> これで終了です


先日、イスラエルの研究チームが、元来ゼロカロリーで血糖値をあげないとされていたサッカリンやアスパルテーム、スクラロースなどをマウスに摂取させると、代謝に関わる腸内細菌のバランスが崩れて血糖値が下がりにくい状態になるという研究結果を発表しました。

人間380人を調べたところ、人工甘味料を多く摂取する人は少ない人に比べて過体重や高血糖の傾向が見られたということも同時に報じられています。

栄養の世界はまだまだ分からないことも多いのでこうした研究が常に行われていることは非常に喜ばしい事なのですが、どうも報道の仕方に恣意的な部分が見えてげんなりしてしまいますね。

人工甘味料にリスクがあるであろうことは特に研究成果を待たなくても当然誰もが理解しているでしょう。ただ、それが例えば急性毒性や発がん性と言った食品にあるまじきリスクなのか、過体重や高血糖を招かないという期待に反して十分な効果が得られていないという消極的リスクなのかは重要ですね。

今回報じられている研究結果は、人工甘味料は期待したほど高血糖や過体重の抑制に役立つとは限らないかもしれないという方向性が示唆されたから、より綿密な研究を行いましょうという入口論にすぎません。

そもそも、マウスの実験ではどの程度の量をどの程度の期間投与されたかが示されていません。また、マウスと人間とでは腸内細菌叢が異なりますので、あまり参考にならない可能性もあります。それでも、これまで考えられていたのとは異なる実験結果が得られたことは重要ですので、今後の追試に注目したいと思います。

また、同時に「人工甘味料を多く摂取する人」と言うのが、そもそも人工甘味料を食べなくても過体重・高血糖になりやすい食生活を送っている可能性は高いと思います。むしろ、太っていて血糖値が高いから人工甘味料を摂っている可能性の方が高いでしょう。

きちんと体重あたり同じ食品を同じ量食べて、人工甘味料の有無だけで二群に分けた実験対象のグループ分けをしないと有意の実験結果が得られるとは考えられません。

なぜこのような安易な内容を二つ同時に報じるのか。それは人工甘味料を食べると太って高血糖になると思い込ませたいという悪意のある誘導だと考えた方が良いでしょう。

そもそも、この実験結果は人工甘味料を食べると太って糖尿病になりやすいとは一切言っていません。体重の増加を抑える効果や血糖値の上昇を抑える効果が、従来期待されていたほど高くない可能性を示しているだけなのです。それを報道のテクニックでおかしな方向に情報の受け手の首を捻じ曲げようとしているのです。

ですから、スクラロースを例にとると砂糖のおよそ600倍の甘みを持っていますので、毎日スクラロースを1グラム食べたグループと砂糖を600グラム食べたグループのどちらがより太ったり血糖値が上がったのかを調べないと現段階では何とも言えませんね。

どうしても今まで良かれと思って使ってきたものに期待外れの部分があると、いとも簡単に報道のウソに乗せられてしまいます。もちろん、人工甘味料を使うぐらいなら砂糖を食べた方がマシと言う研究結果が出るかもしれません。私たちが望んでいるのは、その正確な結果と裏付けとなるデータの開示なのです。

一般人にとって砂糖業界や人工甘味料業界の利益など興味の対象にはなりません。学問として正しい結果を、報道として正しい方法で知らしめてくれることに期待したいですね。

以前から言っていることですが、人工甘味料にはリスクがあるかもしれませんが、砂糖とやブドウ糖、水あめや麦芽糖と言う甘味料も糖尿病患者にとっては高いリスクを持つ化学物質なのですから。

これで終了です

 
rakuten profile Mixi チェック
改版内容日付
△0初版公開2014-09-26