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第15回 糖尿病とお酒

 >> 補填と削減


さて、今回は本論に入る前にブログの方を通じて頂いたご質問に回答したいと思います。

自分に適したカロリーの計算が難しくて分かりません。簡単に計算する方法はありませんか。

そうですね、確かに今までの説明では煩雑すぎたかもしれません。かなり荒削りな計算ですが、誰にでも簡単に割り出せる計算式をご紹介しましょう。身長をメートルで表記した数値だけがあれば誰にでも計算できます。160センチの人なら1.6メートルとして計算して下さい。

身長×身長×650 kcal

が一つの目安になるでしょう。160センチの人なら1,664kcal、170センチの人なら1,879kcal、180センチの人なら2,106kcalです。これは多少身体は動かすものの、基本的にデスクワークが多い成人の数値です。もちろん年齢・性別・職業によっても増減はありますから、この辺りからはじめて、自分の体調を見ながら増減させればいいと思います。

それでは今日の本論、お酒と糖尿病に関して考えてみます。

お酒と言うのはその地の文化と切っても切れない関係にある上、例えばお神酒やキリスト教のワインのように宗教的な意味合いを色濃く持つ物だけに、健康に対する弊害、もっと言えば毒物としての側面が過小評価されてきたように思います。お酒を否定するのはバチ当たりだと言わんばかりですね。しかし、実際のところ多くの疾病に対するのと同じように糖尿病に関しても決していい影響を与えるものではないと思います。

一部では蒸留酒や赤ワインはOKなどと言う考え方も散見されます。確かに糖質という側面からだけ見れば蒸留酒には糖質がほとんど含まれていませんから血糖上昇の直接原因にはなりえません。しかし、それだけを見て「蒸留酒なら糖尿病患者にも安心」などと思っちゃダメでしょう。赤ワインはどうか、ポリフェノールなどが身体に良い効果を持っているので含まれる糖質の分も相殺してくれるなんて、まるで聖餐の飲み物のようなありがたがられようです。これはもう信仰に近い物がありますね。(笑)

ワインの方は悪い冗談だとして、蒸留酒の方はどうでしょう。おつまみを食べながらお酒を飲むと食欲が出ておつまみからのカロリー・糖質過剰で糖尿病に悪い影響を与えることは誰にでも想像できます。一方、本当の酒飲みはおつまみなんかに手を出さない・・・のですかね? これをやっちゃうと、アルコールを代謝するために肝臓が忙しくなりすぎて、お腹が減っている=血糖値が下がっているのに体内で糖新生を行ってくれないため、軽い低血糖状態が起こります。飲酒量がそれほど多くなければ、身体は低血糖を検知して肝臓に糖新生を促すホルモンを出し、血糖値は元に戻って事なきを得ますが、適正な血糖値になって糖新生が止まるかと言うと糖尿病患者はインスリンの出方や効きが悪くなっているので、勢いがついた糖新生は高血糖状態になるまで続いちゃうってことになるわけです。

もちろん飲酒量が多ければ糖新生が充分に行われず低血糖発作でひっくり返り、その治療のため糖分を補給されて結局高血糖状態を一度は引き起こすことになるでしょう。蒸留酒自体は直接高血糖を引き起こしませんが、このように回りくどく確実な方法で糖尿病患者を殺しにかかるのです。なぜ今回はやや過激な表現を使うのか。実は私は仕事の関係でよく中国に出かけていたので、そこでの中国人の飲酒習慣と糖尿病の実態を見て恐ろしく感じたと言うことが原因にあります。

私が良く出かけていた地方は大酒飲みが多いので知られる地方です。この一年ほどは行ってませんが、10年あまり毎月出かけていたので現地の友人も少なからずいるのです。そして、私より10歳以上若い30代、40代の糖尿病患者の多さに驚きました。そしてさらに驚いた事に40代の若さで糖尿病の合併症で体に障害を持つ人が意外と多いのです。ただ、彼らはそれを糖尿病とはあまり認識してないんですよね。単に「酒の飲み過ぎで目が見えなくなった。」とか「怪我を放っておいたから足が腐った。」と言ってるんです。でも、よく話を聞くとどうやら糖尿病の合併症なんですよ。

彼らに比較的共通するのは「標準的な体型」「食べ物の量は少なめ」「野菜好き」「大酒飲み」と言うことです。中国にもさまざまな酒がありますが、その地では白酒(バイジュォ)=中国焼酎が大人の飲み物として一般的です。若年者層向けの35度前後の低度酒もありますが、基本は50〜60度の強烈な焼酎です。ちょっと高級なお店でよく出てくる美味しいと評判の白酒は「五浪液」と言う名前でアルコール含有量は体積比52%のものでした。これらは基本チェイサー付きのストレートで30〜50ml前後のグラスを一気飲みするのが礼儀です。

一度の宴席で一人アタマ一本(=500ml)くらいは普通に空ける羽目になります。アルコールの絶対量で言うと日本酒の一升瓶を空ける程度ですから飲めない量ではないのですが、口に入れた時の強烈さは筆舌に尽くしがたい物があります。それと、昼席と夜席がある日は・・・マジに死ねますね。

最初の頃はきまじめに飲んでいたのですが、ある時コツが判ったので、それ以来中国でもお酒は逃げられるようになりました。それはビールであっても一切口にせず、水とお茶以外飲まないという姿勢を貫くことなんです。中国では酒とたばこは強烈に薦めてきますが、身体が悪いので呑まない、日本人はタバコを吸わなくなってきていると言えば意外とあっさり引き下がってくれるんです。それが、相手に気を遣ってビールぐらいならとグラスを出すと、ビールも焼酎も一緒だとばかりに大きなグラスを焼酎で一杯にされるのです。

そうした飲酒習慣と、若年層と言っても良い年齢での合併症による障害の実態を見ているとお酒と糖尿病の関係ってのは本当に怖いものだと実感した次第です。最近では中国でも若者がカロリー過多による肥満から糖尿病になると言う一般的な類型が目立ってきたので、「中国でも糖尿病患者が激増」などと報道されていますが、実態は古くから最も危険な形での糖尿病が広がっていたのではないかと思います。

次章:補填と削減

 
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改版内容日付
△0初版公開2013-11-09
△1改版リスト追記2013-11-18