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第19回 健康に良い油の摂り方2

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さて、前回に引き続き油の話です。前回、食用油・油脂と言うのはグリセリンと言う土台に脂肪酸と言う酸が一つから三つくっついて中性を示している化学物質だと言うお話をしたと思います。そして、脂肪の性質はその脂肪酸によって左右されるため、脂肪酸構成が栄養素に留意する際非常に重要になってくるのです。なお、同じ油と呼ばれる物質でもガソリンや灯油などの鉱物油は構造が違うため今回のお話とは全く異なる化学的性質を持っています。

さて、脂肪酸です。どんな形をしているかと言うと、炭素(C)が鎖のように連なり、それにムカデの足のごとく水素(H)がくっついた構造が基本です。一番短い鎖は炭素が4個、長い物は30個連なっています。

この炭素原子が水素原子と「くっつく」と言う表現ですが、炭素や水素に限らず、全ての原子は他の原子と結び付くための手(結合手)を持っているという考え方をします。この手同士が握り合って初めてくっつくことができるわけです。そして、その手の本数は原子の種類ごとに決まっています。例えば酸素(O)は2本、水素(H)は1本です。従って水(H2O)は酸素の二本の手に一本ずつ水素が手を結んでいると言うことになります。同じように炭素には4本もの手があります。

そのため、脂肪酸の基本構造はこのようになります。



この鎖の右端に-COOHと言う構造がくっついて脂肪酸の鎖は完成します。この図の・・・の部分にいきなり-COOHが付くと酪酸と言う脂肪酸になります。逆にCの上下にHが一個ずつついた構造がこの後ろにずらっと並んで、全部でCが29個になった後ろに-COOHが付いて終わるとメリシン酸と言う脂肪酸になります。

このように炭素の全ての結合手に水素がくっついているものを飽和脂肪酸と言います。動物性脂肪に多く含まれていて、摂り過ぎると健康に良くないとされる脂肪酸ですね。

一方で、途中で水素がひとつしかくっつかない場所があった場合は、すぐ隣の炭素にも水素が一つしかくっつかず、二つの炭素は下の図のように余った手同士を結びあいます。



この様に二本の結合手で繋がれた状態を二重結合と言います。そして分子の中に二重結合を持つ脂肪酸を不飽和脂肪酸と呼んでいます。健康に良いとされるのはこちらの方ですね。

さて、健康に良いとされる不飽和脂肪酸ですが、それでも注意しなければならないことがあります。それは飽和脂肪酸に比べて酸化しやすいことなのです。酸化はこの二重結合の部分で最も多く起こります。ですので飽和脂肪酸に比べると不飽和脂肪酸は酸化しやすい=油が傷みやすいと言うことなのです。そして傷んだ油は健康を害する原因になります。

頭が良くなるとか動脈硬化や心臓病を予防するとか言われて健康食品の定番と言う感じになったDHAやEPAもω-3系統の脂肪酸です。その名前は脂肪酸の構造を表しています。DHAはドコサ(炭素数20)ヘキサエン(二重結合6個)酸、EPAはエイコサ(炭素数22)ペンタエン(二重結合5個)酸ですね。DHAやEPAは魚に多く含まれますが、この通り二重結合が大変多いためあっという間に酸化して悪臭を放つようになります。魚の生臭さの犯人はこれらの高度不飽和脂肪酸なのです。でも、食べたほうが良い油であることに疑いはありません。ですから「食べたほうが好ましいが鮮度に注意」と言うグループに入れたと言うわけです。

さて、不飽和脂肪酸の中では最も酸化されにくいグループに属する、オリーブオイルや椿油に大量に含まれているオレイン酸に注目してみましょう。オレイン酸は炭素数が18の脂肪酸で、上の図で左端にあるCにHが3つくっついたもの(メチル基)から数えて9番目の結合が二重結合になっています。そのことからω-9(オメガ ナイン)脂肪酸と呼ばれます。そして他には二重結合を持ちませんので、一価の不飽和の脂肪酸とも呼ばれます。

一方、同じ炭素数18の不飽和脂肪酸でも二重結合を二つ以上もつものがあります。たとえばメチル基から数えて6つ目に最初の二重結合を持ち、全部で2ヶ所二重結合があるのが有名なリノール酸です。ω-6多価不飽和脂肪酸のグループに属します。さらに、メチル基から数えて3つ目に最初の二重結合を持ち(ω-3)全部で3ヶ所二重結合を持つのが最近健康食品などで有名になってきたαリノレン酸ですね。

リノール酸やαリノレン酸は人間の体の中で合成できないので必須脂肪酸と呼ばれていますが、実は両方とも食べ物から結構摂れるのです。それどころかリノール酸は日本人の場合過剰摂取が問題になるぐらいよく食べていますので、特に何らかの特殊なダイエットでもしていない限り不足することはまずないと思います。リノール酸は代謝経路の中で炎症にかかわる物質に変化するステージがあったり、うつ病に悪影響を与えるとか言う研究結果があったりで、ちょっと摂り過ぎが問題視されているようです。

また上で説明した通り、二重結合の数が多いので酸化しやすい油の成分ですから、油の傷みにも注意が必要です。一方、必須脂肪酸ではありませんがオレイン酸は不飽和脂肪酸の中では最も酸化されにくいグループに属していますし、健康に寄与すると考えられているため積極的な摂取が好ましいとされています。

摂取比率は飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸のバランスが3:4:3になるのが良いと言われているようです。 ということで今回はここまでにして、油の話の続きはまた次回です。


次章:健康に良い油の摂り方3

 
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改版内容日付
△0初版公開2013-11-28