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第20回 健康に良い油の摂り方3
>> マーガリンなどのトランス型脂肪酸さて、前回に引き続き油の話です。 摂取比率は飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸のバランスが3:4:3になるのが良いと教えられていると言うところまでお話ししましたね。これは判りやすくするために設けられた過去の目安で、現在では農林水産省からもうちょっと細かく設定されたデータが示されています。ただ、問題は比率で示される部分と絶対値で示される部分が混じっているため今一つ理解しにくいと言えるのが難点です。
そこで、一日の摂取カロリーを1800kcalと仮定して、全体をグラム数で換算してみましょう。1800kcalと言うのはデスクワークや家事が中心の生活をしている30代から40代の人で、体重がおよそ63kg(男性62kg/女性64kg)程度の人の一日の必要カロリーです。
まず脂質全体の摂取量ですが、20%〜25%となっていますので、360kcal〜450kcal、脂質の量に換算するとおよそ40〜50グラム程度ですね。一時話題になったイベリコ豚のバラ肉ならおよそ100〜125グラムで一日量を摂ってしまえます。油脂として見た場合ならおよそ大さじ2.9杯〜3.6杯くらいです。
さて、次にそのうち飽和脂肪酸をどのくらいとってもいいのかと言う問題です。飽和脂肪酸は摂り過ぎると肥満の他、悪玉コレステロールの増加に伴う動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病リスクを高めると考えられているようです。
一方、これが健康に悪いと決めつけて摂取しないとやはり生活習慣病のリスクを高めるのみならず、脳出血の危険性が上がると言うリスクがあるそうで、農水省は摂取する上限値と下限値を設けています。これは摂取カロリーの比率で示されています。下限が4.5%、上限が7.0%未満です。上の総摂取カロリーを基準に絶対値に直すと9グラム〜14グラムになります。これをイベリコ豚のバラ肉で見てみると、58.5〜90.9グラムと言うことになりますね。脂質の総量で見た場合100グラム以上OKだったのが、飽和脂肪酸の量で見ると6〜7割程度に減ることになります。
次に多価不飽和脂肪酸の内n-6(ω6)系について見てみます。日本人の食生活ではこの脂肪酸の98%までがリノール酸だそうですので、この項目はリノール酸について述べていると言っても良いでしょう。必須脂肪酸ですから摂らなくてはいけません。しかしやはり摂り過ぎは肥満や生活習慣病の他、体内で炎症を引き起こす物質の素になるとされています。この脂肪酸についても総摂取カロリーの10%未満と言う数値が設定されていますが、目安量として9〜10グラムと言う数字も併記されているのでそちらを採りましょう。
さらに同じ多価不飽和脂肪酸の内n-3(ω3)系です。これは最近話題のαリノレン酸やEPA、DHAなどの必須脂肪酸ですね。これはグラム数で表示されています。男性で2.2グラム、女性で1.9グラム以上の摂取が奨められています。
そして健康に良いとされる一価の不飽和脂肪酸、ほとんどがオレイン酸ですが、それは上記の数値からの引き算になります。総摂取量が40〜50グラム、飽和脂肪酸が9〜14グラム、多価不飽和脂肪酸(n-6とn-3の合計)が10.9〜12.2グラムですので、一価の不飽和脂肪酸は13.3〜30.1グラムと言うことになります。これを3:4:3の比率に当てはめてみると、総量40グラムの場合12:18:12で、それぞれの規定量の範囲に入ってきますが、総量が50グラムになると15:20:15で、飽和脂肪酸も多価不飽和脂肪酸も規定量を超えてしまいます。ですので、
全体の量が少ない時は肉や魚、リノール酸の多い植物油を普通に食べても良いけれど、全体の量が多くなる時は意識的にオレイン酸の多い植物油を摂りましょう
と言うことを意味します。
そこでちょっと実例を挙げて脂肪酸構成のバランスを見てみましょう。
脂質100グラム当たりの脂肪酸のグラム数 | |||
油脂の名前 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和 | 多価不飽和 |
オリーブオイル | 13.29 | 74.04 | 7.24 |
ごま油 | 15.04 | 37.59 | 41.19 |
大豆油 | 14.87 | 22.12 | 55.78 |
ひまわり油(ミッド) | 8.85 | 57.22 | 28.09 |
ラード | 39.29 | 43.58 | 9.81 |
バター | 50.45 | 17.97 | 2.14 |
パーム(やし)油 | 47.08 | 38.70 | 9.16 |
ご覧頂いて判るとおり、不飽和脂肪酸と言っても油によって一価か多価かの差はかなり大きく個性が表れます。また、不健康油の代表のように言われるラードですが、飽和脂肪酸が多いのは確かですが健康に良いとされるオレイン酸(一価不飽和脂肪酸の大半を占めています)の量はごま油や大豆油より多かったりします。ですので、あれは良いけどこれはダメ的な二元論で食べ物を判断しないようにするのが健康への近道じゃないかと思います。
今回のまとめとして、いくつかのメニューを紹介します。まずは牛肩ロース肉100グラムを素焼きステーキにして、仕上げにおいしいオリーブオイルを小さじ一杯掛けます。塩コショウはお好みでどうぞ。脂肪酸構成は8.2g:10.8g:0.9gです。多価不飽和脂肪酸が足りませんが、飽和と一価のバランスは良いですね。
皆さんの定番、納豆。40グラムのパックで見ると0.6g:0.8g:2.2gです。特にリノール酸が多い構成です。納豆だけでなく大豆に由来する比率なので大豆油でも豆腐でもバランスは似通っていると思います。
私の好物、焼きサバはと言うと片身約150グラムで6.8g:7.4g:4.0gとやはり多価不飽和脂肪酸は少な目ですが、もともと摂取しにくいn-3系の脂肪酸(主にDHA/EPA)が3.2グラムも含まれるのでこれは外せませんね。
当たり前のことなのですが、結局のところいろいろ食べるのがバランスを摂るコツって言うことです。
次回は油シリーズのラストとして、トランス脂肪酸や植物油にまつわる欺瞞についてお話ししましょう。
次章:マーガリンなどのトランス型脂肪酸
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改版 | 内容 | 日付 |
△0 | 初版公開 | 2013-12-05 |