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第33回 マスコミの誘導に疑問

 >> 阪神大震災が原因?


テレビを点ければ健康番組やダイエット番組が毎日のように放送されています。言ってみれば万人の興味を引く内容で、製作にコストがかからないからテレビ局にとっては安直に作れるお手軽製品なのでしょう。

しかし、相変わらずその方向性たるやお粗末なものです。

基本は従前の何かを否定し、それに代わるものとして目新しいものを紹介、それで事足れりとしています。少し前までは低インスリンダイエットとか糖質制限がトレンドでしたが、ここに来て別の方向に舵を切ったようです。糖質制限を推奨するのも否定するのも、テレビ局の商売ですから別に構わないのですが、視聴者は騙されないように注意を払っておくべきでしょうね。


何に注意するかと言うとレトリック(修辞技法)の部分です。たとえば

カロリーを減らすと痩せにくい体になる。

と言う説明をして、カロリー制限以外の減量方法に興味を向かせる手法は最近よく使われています。確かにカロリー制限をすると二つの方向で痩せにくくなります。

一つは動物の体の自己保存本能に根差したもので、摂取カロリーが不足した状態が続くと代謝を下げるなどして、少ないエネルギーで生命を維持できるように体が対応します。その副次的な現象として冷え性や痩せにくさは表れてくるでしょう。

もう一つは完全に数学の問題です。たとえば平均的な体の持ち主を考えてみます。35歳女性、身長160.0cm、体重64.0kg。BMIで見た場合25.0で肥満ではないとされるギリギリ上限値です。

この人がBMI21.0、すなわち体重53.7kgを目標に減量に励んだとします。10.3kgの減量、ちょっと大変そうですね。

比較的生活活動の低い生活を送っている彼女の場合、基礎代謝量1389kcal/日、消費エネルギーは1806kcal/日です。

そこで一ヶ月で体重の3%を減らすべくカロリーを制限したとしましょう。体重の3%はこの場合1.92kgにあたります。一日にすると64グラムですね。これを脂肪細胞換算するとおよそ461kcalになります。まずは一日の消費カロリー1806kcalから461kcalを引いた1345kcalを一日に食べていい量に設定することになりますね。

一ヶ月で1.92kg減量できたとしたら、10.3kg減らすのに5か月と11日かかる計算になります。しかし、ここですでに一つの落とし穴が待っているのです。一か月後、最初の目標を達成した彼女は、次の月の減量に取り掛かるわけですが、64kgから1.92kg減って62.08kg、この3%となると1.86kgです。さらに1.81kg、1.75kg、1.70kgと、減らせる幅も体重の減少と同時に減ってゆきますので、実際に目標値に達するには一週間から10日くらい余計にかかるでしょう。

大したことないように思えますが、減量と言うのは結構精神的な要素が絡んできますので、設定した日に目標に届かなかったと思うのはリバウンドの原因になりがちですね。

そしてもう一つの数学、実はこっちの方が重要なのですが、痩せると基礎代謝も消費エネルギーも減りますから、より摂取カロリーを減らさないと減量できないのです。

例えば1.92kgの減量に成功した段階で、彼女の基礎代謝は1347kcal/日、消費エネルギーは1751kcal/日に下がっています。その状態から二ケ月目の減量目標1.86kg/月、すなわち62グラム、脂肪細胞換算で446kcalを減らすことになるので、一日に食べていい量は1305kcalということになります。前月と比べると40kcal/日、一日当たりいちご120グラムぐらいのカロリーをさらに減らさないといけないことになります。

逆に前月と同じカロリーを摂った場合、1.86kgの目標に対して1.70kg程度の減量しかできない、すなわち痩せにくい状態になっていると言うわけです。

これは先に述べた、栄養不足が原因の自己防衛委反応とは別で、純粋な計算の問題なのですが、テレビ番組ではこうしたことを一切知らせませんので、視聴者の多くはカロリー制限は役に立たないと言う印象操作にまんまと引っかかるわけです。

摂取カロリーを減らして体重が減るか減らないかは、全量を減らした、すなわち摂取カロリーをゼロにした場合に痩せるか痩せないか を考えればわかります。もしカロリーの摂取をゼロにしても体重が減らない人がいれば、生命活動に必要なエネルギーをその人は空気中からでも造り出していることになります。そうなったらもう、ダイエットどころの話じゃなくて原発の代わりに電気でも作ってほしいぐらいです。(笑)

繰り返します、摂取カロリーを正しく減らせば必ず痩せます。糖質制限をしても方法を間違えなければ必ず痩せるのです

糖質制限と言うのは減量に視点を置いた場合、実は回りくどいカロリー制限なのです。どういうことでしょう。単純化するために判りやすい数値で説明します。実際の数値とは異なりますのでそのまま減量実務には応用しないで下さいね。

ある人が太りも痩せもしない状態で一日2,000kcalを摂っていたとします。と言うことは消費カロリーも2,000kcal/日と言うことですね。

そして厚労省あたりが推奨する栄養バランスで、炭水化物60%、たんぱく質20%、脂質20%の食事をしていたとしましょう。この場合、糖質を含む炭水化物からの熱量は1,200kcalということになります。で、一念発起、糖質制限を開始して、炭水化物の摂取を全体の40%に減らしたとします。

もとより炭水化物には食物繊維も含まれますから糖質をゼロにしたとしても炭水化物はゼロにはなりません。

仮に減らした20%が全部糖質であったとしたら、熱量はおよそ400kcal減ります。で、直接的なカロリー制限は行わないのでその減った分をたんぱく質と脂質で補うことになります。つまり余分に食べるわけですね。

まず400kcal分、つまり糖質およそ100gを減らすと言うのはどの程度の食べ物を減らすことになるのでしょうか。目安ですがご飯丼一杯270グラム(吉野家の牛丼並盛のごはん部分より少し多め)くらいで糖質が100gになりますので、毎日どんぶり飯一杯分を減らすことになりますね。

一方、その分を炭水化物を含まないお肉などで代替するとどうなるでしょうか。概算ですがファミレスなどで出てくる安物の輸入牛肉を使ったサーロインステーキ(焼き油や調味料を除く)でおよそ135グラムくらいです。

以上のことから、毎日ご飯を270グラム減らしてサーロインステーキを135グラム食べると炭水化物の量を40%に減らした糖質制限食になります。

そこで今度はエネルギー消費なのですが、糖質は単糖類にまで分解されるとそのままエネルギーとして使えますので手っ取り早いエネルギー源です。一方、糖質の摂取が少なくて不足した場合、人間の身体は糖新生と言うメカニズムで体内においてエネルギー源となるブドウ糖を作り出します。

その原料はタンパク質が分解されたアミノ酸、糖新生に必要なエネルギーは脂肪が分解された脂肪酸が用いられるのです。つまり、糖質を摂っている限りそれはそのままエネルギーになりますし、余った分はインスリンの働きで体脂肪に合成されて保管されるのです。一方、糖新生で作られるブドウ糖は、健康であれば必要量しか造られません。また、同じ量のブドウ糖が体内に存在する場合でも、それを作り出すのにエネルギーが必要なので、自動的に体脂肪のエネルギーを消費してしまうのです。

ですので、全く同じカロリーを摂っていてもエネルギーを使う段階で糖質制限食を摂取している人は余分にカロリーを消費しているので、相対的に見ればカロリーを制限しているのと同じ減量効果があるということなのです。

こうした糖質制限において、たんぱく質や脂質を多めに摂ることが長期的に安全かどうかの確認ができていないと言う論拠で最近のテレビは糖質制限の長期的ダイエットへの導入を否定しています。

正直、毎日ステーキを食べてたんじゃ健康の不安より財布の方が心配ですけどね。(笑)

でも、たとえばブロッコリや小松菜などの緑黄色野菜を茹でて、毎食小さじ一杯のオリーブオイルで頂いたとしたらどうでしょう。さらにブリやサバなどの焼き魚も良いですね。ステーキなら心配な飽和脂肪酸もこれで解決です。野菜の量の方を優先すればたんぱく質の過剰摂取も抑えられますし。と言うか、そもそもステーキ肉のたんぱく質含有量は納豆と大差ないんですよね、納豆の食べ過ぎが体に悪いなんてことはあまり聞きません。

私は決してカロリー制限だけ、糖質制限だけを推奨するものではありませんし、むしろ他の方法も含めた組み合わせの活用を考えている人間ですが、故意に視聴者の誤解を誘導するテレビ局などマスコミの姿勢に疑問を感じざるを得ないので、素人ながら私見をこうしたエントリにまとめてみました。


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改版内容日付
△0初版公開2014-03-14